~栄養アセスメントの導入で、質の高い介護サービスを目指します~
医療事務や介護、保育サービスを提供する株式会社ソラスト(本社:東京都港区/代表取締役社長CEO:藤河 芳一)は、2021年4月より当社グループのデイサービスにおいて、科学的介護の実現に向けた「高齢者の栄養改善効果の研究※1」を実施しています。このたび、適切な栄養サポートがご利用者様の健康維持とQOL(生活の質)の向上に寄与する可能性が示されましたので、中間報告いたします。
この研究は、栄養改善による高齢者の健康維持および疾病罹患リスクの軽減等を目的に、ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー(本社:兵庫県神戸市/カンパニープレジデント:中島 昭広)と共同で実施しています。「低栄養または低栄養のリスクがある」ご利用者様を見つけ、適切な栄養サポートを行うことで、“フレイル※2”からの回復を図ります。
今後当社では、栄養サポートができる体制づくりを拡大し、適切な栄養アセスメントの導入を計画していきます。そして、これからも安心して暮らせる地域社会を支え続けるため、質の高い介護サービスの提供を目指してまいります。
<高齢者の栄養改善効果の研究について(概要)>
■研究名称:
「通所介護施設利用者を対象とした栄養評価Webフォーム(MNA プラス)活用による栄養状態の評価に関する前向き観察研究」
■観察期間:2021年4月~2022年11月
■主な内容:
・「低栄養または低栄養のリスクがある」ご利用者様を見つける
・「経口栄養補助食品」摂取の有無による栄養介入に関する効果測定
■対象者:
当社グループのデイサービス(13事業所)を利用しているご利用者様
※本研究は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に基づき、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」ならびに「個人情報の保護に関する法律及び、関連通知」を遵守し、倫理審査委員会の承認を取得した研究です。
※1:研究には、ちゅうざん病院 副院長/金城大学 客員教授の吉田貞夫先生と、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の本川佳子先生にも研究アドバイザーとして参加いただいています。
※2:フレイルとは、加齢に伴い心身の活力や運動機能が低下した虚弱のこと。適切なサポートにより予防や改善が期待できるといわれています。
<中間報告について>
「第44回日本臨床栄養学会総会」(2022年10月7日~9日)で発表した吉田貞夫先生の資料を一部改定しました。
■約3割のご利用者様が「低栄養または低栄養のリスク」
<結果>
デイサービスのご利用者様の約3割(507名中138名)が「低栄養または低栄養のリスクがある」という結果となりました。
※調査は、ネスレ日本株式会社ならびに株式会社メディエイドが提供する栄養アセスメントツール「MNA プラス」を活用。
次に、「低栄養または低栄養のリスクがある」138名のうち、研究内容に同意いただいた<54名>を対象に栄養介入に関する効果測定を実施しました。
■栄養補助食品の摂取により2つの数値に有益な変化が!
- その1:栄養補助食品の摂取により、<デイサービスの利用中止率>はわずか12%!
<結果>
栄養補助食品「摂取あり」のご利用者様が、デイサービスの利用を中止した割合はわずか12%でした。一方で、「摂取無し」のご利用者様が、デイサービスの利用を中止した割合は、30%と高い結果となりました。
※利用中止の主な理由は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設への入所、入院や死亡によるもの。
※栄養補助食品は、ネスレ日本株式会社の栄養補助食品をご利用者様の状態に応じて提供。
次に、上記の計54名のうち、6か月後までのデータが得られた摂取あり16名と摂取無しの5名を比較しました。
- その2:栄養補助食品の摂取により、<体重・握力・BMI>は有意に増加!
<結果>
栄養補助食品「摂取あり」のご利用者様の体重・握力・BMIは、摂取前と比較して有意に増加しました。
※平均値の数値を記載
<「共同研究」に関しての中間総括について>
- 監修者コメント
吉田 貞夫先生(医療法人ちゅうざん会 ちゅうざん病院 副院長/金城大学 客員教授)
今回の中間結果から、低栄養または低栄養リスクのあるデイサービス利用者に経口栄養補助食品を1か月以上摂取してもらうことで、体重や握力が増加するとともに、デイサービスの利用中止、入所や入院、死亡などのリスクを低減できる可能性があることがわかりました。
デイサービス利用者の栄養状態を把握することはとても有用であり、栄養状態に合わせた適切なエネルギー、たんぱく質の摂取と、デイサービスでの適度な運動は、低栄養やフレイル、サルコペニア、さらには免疫力低下を防ぐ対策としても重要です。
今後も研究データを集積し、デイサービス利用者の低栄養や経口栄養補助食品摂取によるサルコペニアやADL(日常生活動作)への影響などについて詳細に検討していく予定です。
- 当社コメント
髙崎 哲矢(株式会社ソラスト 事業開発本部 新規事業推進部長)
このたび、ネスレ日本様と共同研究を実施し、適切な栄養サポートにより、ご利用者様の健康維持・向上において非常に有益な結果を得ることができました。当社が取り組む「科学的根拠に基づく適切なケア=科学的介護」の実現に向けて一歩前進できたのではないかと考えております。
なお、当社では既に多くのデイサービスで、東京都栄養士会様のご協力のもと、栄養アセスメントに関する取り組みを開始しています。今後も適切な栄養サポートを行っていくと同時に、認知機能や口腔・嚥下機能などさまざまな分野での実証研究を積極的に進めていきます。
当社では、これからもご利用者様が住み慣れた地域でいつまでも安心して暮らせるように、共同研究で得られたエビデンスを活用しながら、質の高い介護サービスの提供を目指してまいります。